国際連携栄養研究室
1.主要メンバー
室長 | 山口 美輪 | 技術補助員 | 長生涼子、安井紀子 |
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2.研究目的・背景
「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に向けた国際協力
国連総会で採択された、持続可能な開発のための国際目標であるSDGsの達成に貢献するため、栄養と身体活動に関するWHO協力センターとしての知見を活かし、国際協力を積極的に推進しています。
1) 国際共同研究の推進
国内外の研究機関と連携し、共同研究を実施することで、持続可能な食環境に関する科学的根拠を発信しています。
2)栄養と身体活動に関するWHO協力センターの事務局運営
WHOアジア太平洋地域事務局をはじめ、加盟国間の連携と国際ネットワークの構築を図ります。国際ネットワークを通じてアジア太平洋地域の研究者を支援し、栄養と身体活動に関するサーベイランスを強化するなど、栄養不良の二重負荷(低栄養と過栄養)をはじめとする地域の健康や栄養課題の改善に貢献しています。
栄養と身体活動に関するWHO協力センターの詳しい内容については、こちらを覧ください。
3.研究内容
持続可能な食環境に関する研究WHO協力センターのネットワークを通じて実施した研究
(i) 国際評価指標に基づく健康的な食環境に関する政策評価研究
本研究は、健康的な食環境の政策指標であるHealthy Food Environment Policy Index(Food-EPI)を用いて、諸外国の優良事例と比較し、日本の食環境政策の優良点と課題点を明らかにすることを目的としました。その結果、不健康な食品の価格設定、栄養素量の規制、食品マーケティングの規制など、健康的な食事選択を促すための政策が不足している一方で、国民健康・栄養調査など、政策立案のための基盤システムが整備されていることが明らかになりました。今後、行政、民間企業、研究機関などが連携し、政策指針に基づいた市場システムの構築や政策効果の検証を進めることで、より健康的な食環境の実現が期待されます。
Yamaguchi et al. Public Health Nutr 2022. doi: 10.1017/S1368980021004900
(ii) モンゴルにおける環境負荷とヒトの健康を考慮した食事に関する評価研究
本研究は、モンゴル人の食事摂取が、環境負荷とヒトの健康を考慮したプラネタリーヘルスダイエット(PHD)にどの程度近似しているかを明らかにすることを目的としました。その結果、PHDの推奨摂取量を100%充足率とすると、赤身肉の摂取量はPHDの17g/日と比較して17倍以上の1,738%と非常に高く、一方、野菜類は20%、果物類は8%と低い充足率を示しました。これらの結果から、モンゴルの食事ガイドラインに基づいた健康的な食品の供給を充実させるとともに、栄養教育を普及させることが今後の課題であると考えられます。
Delgermaa and Yamaguchi et al. PLOS Glob Public Health 2023. doi: 10.1371/journal.pgph.0001229
(iii) 食環境の主観的評価法の検討:システマティックレビュー
本研究は、食品入手に関する主観的な測定方法、及び食品入手に関する主観的な評価と食習慣との関連性について整理するため、システマティックレビューを行いました。食品入手に関する主観的な評価において、頻繁に利用される指標は、順に利便性、アクセス性、受容性、手頃な価格、および適応性でした。また、食品入手に関する主観的な評価が良いほど、健康的な食習慣との正の関連性がある傾向でしたが、その関連性は弱いことが示唆されました。個人の食環境の評価を行うためには、いくつかの指標を用いて総合的な評価を行うことが必要です。
Yamaguchi et al. Nutrients 2022. doi: 10.3390/nu14091788
日本人の食事に関する研究
(iv) 食料システムの観点からみた和食と持続可能で健康的な食事の比較
本研究により、和食は、国際連合食糧農業機関と世界保健機関が推奨する持続可能で健康的な食事の中でも、地域食の特徴を備えていることが明らかになりました。地域食であるためには、その土地の多様な食品と植物由来食品を中心とした健康的な食事を推進し、地域食の重要性について継続的な食育を実施することが重要です。さらに、健康的な食品選択を促す取引・マーケティング戦略や、健康格差を考慮した食料システム構築の概念を導入することで、和食をより持続可能かつ健康的な食事へと発展させることができると思われます。
Yamaguchi and Nishi. ACS Symposium Series 2022. ISBN: 9780841297395
(v) 食事様式に応じた料理レシピを分類する機械学習モデルの開発
料理レシピサイトのレシピデータを用いて、日本で一般的な「日本食」、「中華」、「洋食」の食事スタイルを予測する6つの最適な機械学習モデルを開発しました。分析の結果、主に「調味料」と「だし」の特徴が食事スタイルを予測する上で有用であることが確認されました。本結果は、複雑な日本人の食事の特徴を捉えるための補完的ツールとして活用できます。さらにこの補完的ツールにより、世界的に注目度が高い長寿国日本の食習慣と健康との関係解明のための一助となることが期待されています。
Yamaguchi and Araki et al. Foods 2024. doi: 10.3390/foods13050667
その他、様々な研究を進めています。
国際連携栄養研究室
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