抗体デザインプロジェクト
1.メンバー
プロジェクトリーダー | 永田 諭志 |
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プロジェクト研究員 | 伊勢 知子 |
研究補助員 | 田中 樹子、加藤 加世子 |
事務補助員 |
森 恵 |
2.研究概要
抗体デザインプロジェクトでは、患者の生体内で治療効果を最大化する次世代の抗体医薬の作製に取り組んでいます。抗体の認識するエピトープ構造が、抗体の機能を決定する要因であることに注目しており、生体内で標的抗原に提示されている多様なエピトープ構造を、抗体の機能単位でグルーピングし、総括的に探索・同定するための独自技術の開発を行っています。社会ニーズの高い創薬標的に対して技術開発を同時に行い、早期の社会実装を目指しています。
3.研究背景
私たちは忘れがちですが、「抗体」はもともと「物質」の単純な名称ではありません。抗体という言葉は、多細胞生物の体内に、ウイルスや細菌などの異物(抗原)が入り込んだとき、その異物を生体から追い出すために、生体内に形成されてくる、「なにか」を表すために生まれた言葉です。その後、ほ乳類では「抗体」はタンパク質名としては免疫グロブリン(Ig)に相当し、抗原に結合することがわかりました。しかし話はさらに複雑で、免疫グロブリンは単一の物質ではなく、それぞれの抗原結合部位はわずかに異なっており、非常に多様でした。このような混在物を、多くの人に投与できる薬として利用することはとても難しかったのですが、単一の抗体を産生するハイブリドーマ細胞の発明を契機に様々な抗体工学の技術が開発され、事態は一変しました。今や、150品目を越える、モノクローナル抗体が、重要なバイオ医薬品として、従来の薬では治療が困難であった様々な疾病治療に使われています。
しかしながら、現在では抗体作製はもはや成熟技術で、技術的な発展の余地はないのでしょうか?そんなことはありません。我々は、医薬として利用できている抗体のポテンシャルは、現在でも、一部に過ぎないと考えています。我々の研究室では、抗体が本来有している未開発のポテンシャルを開発し、次世代の抗体医薬として利用するための技術開発を進めています。我々が注目しているのは抗体の結合部位=エピトープです。異なる抗体は、それぞれのエピトープ(抗原上の抗体結合部位)に結合し、異なる機能を示します。例を挙げると、同じ膜レセプターAに対する抗体でも、天然リガンドと同じようにレセプターを活性化するアゴニスト抗体や、それとは逆に天然リガンドの結合を阻害し活性化も誘導しないアンタゴニスト抗体があります。次世代の抗体医薬の機能を最大化させるためには、抗体を機能単位である機能エピトープ(仮称、造語)に従って、分類・同定する必要がありますが、結合エピトープと異なり、機能エピトープの概念は、世界的にも確立していません。我々はこの機能エピトープの適切な記述・同定法の研究を行なっており、機能を発揮する新しい抗体を作製しています。
4.研究内容
Under Construction
5.最近の主な論文
- Hiroki Akiba, Junso Fujita, Tomoko Ise, Kentaro Nishiyama, Tomoko Miyata, Takayuki Kato, Keiichi Namba, Hiroaki Ohno, Haruhiko Kamada, Satoshi Nagata*, Kouhei Tsumoto*. Development of a 1:1-binding biparatopic anti-TNFR2 antagonist by reducing signaling activity through epitope selection. Commun Biol 6, 987 2023. DOI:10.1038/s42003-023-05326-8
- Kensuke Suzuki, Masaki Tajima, Yosuke Tokumaru, Yuya Oshiro, Satoshi Nagata, Haruhiko Kamada, Miho Kihara, Kohei Nakano, Tasuku Honjo, Akio Ohta. Anti-PD-1 antibodies recognizing the membrane proximal region are PD-1 agonists that can downregulate inflammatory diseases. SCIENCE IMMUNOLOGY 8, no. 79 (Jan 13 2023): eadd4947. 2023. DOI:10.1126/sciimmunol.add4947.
- Yamaguchi T, Hoshizaki M, Minato T, Nirasawa S, Asaka MN, Niiyama M, Imai M, Uda A, Chan JF, Takahashi S, An J, Saku A, Nukiwa R, Utsumi D, Yasuhara A, Kwok-Man Poon V, Chung-Sing Chan C, Fujino Y, Motoyama S, Nagata S, Penninger JM, Kamada H, Yuen KY, Kamitani W, Maeda K, Kawaoka Y, Yasutomi Y, Imai Y, Kuba K. ACE2-like carboxypeptidase B38-CAP protects from SARS-CoV-2-induced lung injury. Nature Commu 12(1): 6791, 2021. DOI: 10.1038/s41467-021-27097-8.
- Urano E, Okamura T, Ono C, Ueno S, Nagata S, Kamada H, Higuchi M, Furukawa M, Kamitani W, Matsuura Y, Kawaoka Y, Yasutomi Y. COVID-19 cynomolgus macaque model reflecting human COVID-19 pathological conditions. Proc Natl Acad Sci U S A 118(43):e2104847118, 2021. DOI: 10.1073/pnas.2104847118.
- Asaka MN, Utsumi D, Kamada H, Nagata S, Nakachi Y, Yamaguchi T, Kawaoka Y, Kuba K, Yasutomi Y. Highly susceptible SARS-CoV-2 model in CAG promoter-driven hACE2-transgenic mice. JCI Insight 6(19): e152529, 2021. DOI: 10.1172/jci.insight.152529.
- Akiba H, Ise T, Nagata S, Kamada H, Ohno H, Tsumoto K. Production of IgG1-based bispecific antibody without extra cysteine residue via intein-mediated protein trans-splicing. Sci Rep 11(1):19411, 2021. DOI: 10.1038/s41598-021-98855-3.
- Akiba H, Satoh R, Nagata S, Tsumoto K. Effect of allotypic variation of human IgG1 on the thermal stability of disulfide-linked knobs-into-holes mutants of the Fc for stable bispecific antibody design. Antibody Therapeutics 2(3):65-69, 2019. DOI: 10.1093/abt/tbz008.
- Ambegaonkar AA, Nagata S, Pierce SK, Sohn H. The Differentiation in vitro of Human Tonsil B Cells With the Phenotypic and Functional Characteristics of T-bet+ Atypical Memory B Cells in Malaria. Frontiers in Immunology 10: 852, 2019. DOI: 10.3389/fimmu.2019.00852
- Shancer Z, Liu XF, Nagata S, Zhou Q, Bera TK, Pastan I. Anti-BCMA immunotoxins produce durable complete remissions in two mouse myeloma models. Proc Natl Acad Sci U S A 116(10):4592-4598, 2019. DOI: 10.1073/pnas.1821733116
抗体デザインプロジェクト
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