中村祐輔プログラムディレクターご挨拶
「AIホスピタル」と聞いて、皆様は何を想像するでしょうか?まるで患者さんがAIロボットに診察される冷ややかな場面を想像されていないでしょうか? 私の描く「AIホスピタル」はこれとは真逆です。AI技術を用いた高度な医療を提供することと医療現場の働き方改革を並行して行うことにより、患者さんが医師や看護師と目を見て話をする時間を増やすことを目標としています。目指すは 「心とこころが通い合う先進的な医療現場」です。
医療現場では様々な課題が顕在化してきています。医療に関連するデータ は加速度的に増加していますので、それらの情報を確実に把握することが難しくなってきています。また、電子カルテ等の入力作業や看護記録作成などに多くの時間を取られ、診察時や看護現場で患者さんと向き合う時間の確 保が困難になってきています。また、画像診断や病理診断の負荷が次第に 重くなってきています。さらに、新しく開発されているウェアラブル端末 やAIシステムなど、医療の質の確保に寄与するような医療機器のルールが明確ではありません。患者さんの医療情報管理体制は、災害等の不測の事態への備えといった観点では不十分です。加えて、高度化・多様化した医療現場での診断補助や治療法選択支援システムの構築は、的確な診断・医療行為を行うために必須であると言えます。このプログラムでは、セキュリティレベルの高い統一した医療情報データベースの構築などの課題にも取り組んでます。
我々のプログラムでは、高齢化社会という我が国の抱える大きな課題と医療現場の直面する課題に対して、AIを用いた最先端技術による解決を目指しています。そして、患者さんの詳細な情報に基づく、より精度の高い診断補助・治療システムを提供する「AIホスピタル」のモデルケースを2022年度末までに10医療機関で運用開始することを目指します。さらに、「AIホスピタル」がその後も継続性をもって全国に展開されることが最終的なゴールです。
その実現に向けて、既に公益社団法人日本医師会や内閣府をはじめとする 関係省庁とも協力しており、患者さんやご家族が満足される、高い質の 医療の提供に向けて、本プログラムに参加している関係者と共に精一杯 努力していきます。
課題紹介動画(英語版)
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中村 祐輔PD プロフィール
中村 祐輔
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 理事長
東京大学名誉教授、シカゴ大学名誉教授。
1977年 大阪大学医学部卒業、病気の解明や治療に役立つ遺伝子マーカーを発見し、「ゲノム医療」を牽引してきた。 東京大学医科学研究所分子病態研究施設教授、東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター長・教授、理化学研究所ゲノム医科学研究センター長、独立行政法人国立がん研究センター研究所所長、内閣官房医療イノベーション室長、シカゴ大学医学部血液・腫瘍内科教授・個別化医療センター副センター長、公益財団法人がん研究会 がんプレシジョン医療研究センター所長等を歴任、2022年より現職。
原著英文論文は1,550編以上、その引用件数は200,500回を超える。2020年クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞を受賞した。令和3年度の文化功労者に選出された。